血液をサラサラにするお薬「ワルファリン」

食生活が昔とはかなり異なる日本では生活習慣病など、偏った食事による疾患が多くなっています。
血液の中に脂肪が多くなると血栓ができやすくなり、それによって脳こうそくなどの重篤な疾患を引き起こすこともあります。

どろどろになった血液をサラサラにするお薬として利用されるのがワルファリンで、血栓の生成を抑制してくれるお薬です。

スイートクローバーと牛の大量死

このお薬はスイートクローバー病という病気と深い関係にあります。
スイートクローバー病は1920年にカナダで発見された牛の病気で、出血が止まらず牛が次々に死んでいくという事態に陥ったことから発見されました。

この牛が出血し死亡したという地域では、飼料としてスイートクローバーが栽培されていました。
スイートクローバーは痩せた大地でもよく成長してくれるため、飼料として非常に利用しやすかったのです。

しかし出血が止まらなくなって死亡した牛を調べてみると、腐ったスイートクローバーを食べたことによって死亡したということがわかり、この病名が付けられました。
ウィスコンシン大学で調査した結果、腐ったスイートクローバーからジクマロールという成分が見つかり、これが原因で牛が死亡したことが分かったのです。

その後、このジクマロールの構造を元に作られたのが、ワルファリンという科学物質です。
元々は殺鼠剤として利用されてきました。

毒としての価値からお薬としての価値へ

ジクマロールが精製・単離されワルファリンという化学物質が作られてからは、暫く殺鼠剤として利用されてきました。

人の身体の中では私達が意識していない、気が付いていないだけで実は内出血がかなり起っています。
ネズミなどの動物でも同じことが起っているのですが、ワルファリンを食べたネズミは、出血が止まらなくなり死に至ります。

ネズミを死亡させるほどの毒なのだから人に使うなんて考えられないということで、臨床応用に至らなかったのですが、ある人物が自殺しようとワルファリンを大量服用した事件が起こります。

死にたいとこのワルファリンを大量服用したのに、死ぬ事無く無事生還したことから、人が利用しても大丈夫なのではないかと想像され議論となり、研究によって抗凝固薬として効果を発揮するお薬として誕生したのです。
毒が薬に変わるきっかけはこうした事件から起ったことだったのです。

もちろんワルファリンを利用する場合、医師の指示の下、適量を利用することが求められますし、定期的に血液検査を行うことや、納豆などビタミンKをたくさん含む食事を制限されます。

制限も多いお薬なのですが、血栓ができやすい人にとっては命を守るために利用できるお薬となったのです。