コレステロールがふえると病気も増える?

血液内のコレステロールが多くなると、血栓ができやすくなり心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなります。
生活習慣病にならないためにも、脂質もほどほどに・・・バランスのいい食事をするようにと食事指導を受ける方も少なくありません。

和食を食べている限り、大量摂取を継続しなければ血液内にコレステロールが多くなるということも少ないと思いますが、現代の食事は欧米化しているので、脂質が多い食事となっていて、生活習慣病になるリスクも高い状態です。

血液中にコレステロールが多くなると、様々な病気を起こす要因ともなるため、コレステロール阻害薬を利用し、血中コレステロールを減少させるのです。
この時に利用するコレステロール阻害薬がスタチンです。

コレステロールは何もかも悪者ではない

コレステロールというとこれまでとにかく悪者とされてきた感じがありますが、実は、けっして悪ばかりではないのです。
というよりも、私たちの体にとって必要だからこそ、合成されているのです。

全てのコレステロールのうち、80%は体内で合成されており、細胞の成分として利用されています。
60兆個もの細胞からなる私たちの身体は、男性ホルモンや女性ホルモンなどの様々な成分、物質がありますが、これにコレステロールが必要となってきます。

体の成長にもかかわるので、コレステロールは人にとってなくてはならないものなのですが、体内に必要な量あるということが重要で、多くなりすぎてしまうと問題を引き起こします。

カビから見つけたメバスタチン

コレステロール阻害能力を持っている成分をみつけたのは日本人で遠藤章という人です。
6000種類ともいわれるカビの研究から、2年の歳月をかけて1973年、アオカビからメバスタチンを発見します。
しかしラットを利用した研究では思ったような成果が出ません。

マウス、ラットで効果がないものは人にも効果がないというのが昔の常識だったので、ラットで研究成果が得られないということは効果がないとするしかありませんでした。
しかし遠藤さんは例外を発見します。

メバスタチンと同じようにコレステロール値を下げる医薬品「コレスチラミン」は、人に効果があってもラットに効果がないという特性を持っていました。
ということは逆のこともあるのかもしれないと考えたのです。

鶏、犬などにメバスタチンを投与してみると、コレステロールは見事に改善、これは新薬に出来ると喜んだのもつかの間、今度は、肝毒性があることがわかりました。
この問題を解決してもさらに発がん性がある等、次々に問題が見つかり開発は中止となります。

その後メバスタチンを投与した犬の尿を調べてみると、コレステロール合成阻害作用を持っている新しい物質が発見され、これがプラバスタチンと名付けられます。
安全性がメバスタチンよりも高く、強いコレステロール阻害作用を持っているこの物質は、1989年、やっとコレステロール阻害薬として日の目を見たのです。