妊娠中に薬を飲むことによって、心配されることは、「催奇性」とか「催奇形性」と呼ばれる、おなかの赤ちゃんに奇形を作る作用や「胎児毒性」といって、赤ちゃんの発育や機能の妨げになるような作用が服用している薬にあることです。
日本でも、妊婦さんが薬を服用したこにより胎児に奇形(特に、特に上肢の短縮)を生じたことで大きな社会問題となったことがあり、「サリドマイド事件」と呼ばれています。
1957年に当時の西ドイツで開発された睡眠・鎮静剤サリドマイドを服用した妊婦さんの胎児に奇形を生じたという世界的な事件で、大変衝撃的な世界的薬害事件として有名です。
そのようなこともあり、現在では、抗がん剤など一部の薬でもなければ、危険な薬が発売されることもなく、市販薬についても問題はありません。
しかし、妊婦を対象として、薬の臨床試験を行うことはできないので、絶対安全かというとそれは言い切れません。
安全性のチェックは動物実験をはじめ様々なデータから判断されています。
また、カゼ薬、頭痛薬、胃薬などの市販薬を通常の範囲で服用しているのであれば問題はありませんが、市販の漢方便秘薬などによく使われる大黄は、流産の恐れがあるので注意が必要です。
また、ビタミンAも妊娠前3ヶ月~妊娠3ヶ月に1日1万単位以上の摂取すると、催奇性があるとの報告もあり、市販のビタミン剤の服用も要注意です。
やはり不要不急の薬は飲まないとがいいので、妊娠している方や妊娠しているかもしれない人は主治医か産婦人科医に必ず相談しましょう。
また、病院で処方している薬の中には、妊婦には使用が禁止されている薬がたくさんあります。
痛風発作予防薬の「コルヒチン」は、妊婦にも禁忌ですが、父親が服用していて染色体異常(ダウン症候群)の子供ができたとの報告もあるので、妊婦に限らずお父さんの方も注意しましょう。
高血圧のため降圧剤を服用している場合には、レニベース、ニューロタンという商品名の薬では、腎形成障害、顔面奇形、羊水過小、胎児死亡の報告があって、妊娠の中・末期に注意が必要とされています。
また、喘息の持病があり、吸入ステロイドや気管支拡張剤を服用している場合は、妊婦さんが喘息発作を起こした時に、お腹の中の赤ちゃんが低酸素状態になる恐れがあるため主治医や産婦人科医の指示を守って服用をすることになります。
このように、薬により、危険度のレベルは、まちまちですし、さらに服用量、服用時期によっても危険度が違ってきますから、主治医や産婦人科医には必ず相談することを忘れないでください。