去痰薬は、「きょたんやく」と読みます。
何だか、難しそうな名前ですが、字をしっかり読みこなして頂けば分かるように、痰を取り去る薬、いわゆる、痰切り剤です。
痰が絡まる、痰が切れないというと、高齢者や、寝たきりの介護状態にある方を思い浮かべやすいですが、痰の辛い症状は、風邪によっても引き起こされます。
健康な成人なら、風邪で痰が絡まった程度では、そこまで苦しまないと思いますが、子どもの頃、辛い思いをした方はいないでしょうか。
小さい子供や、体力が弱り、体の機能が低下した高齢者では、痰がうまく切れず、苦しい思いをするケースが多いようです。
そんな症状を緩和し、喉をすっきりさせてくれるのが、去痰薬です。
去痰薬は、喉を通る気道の分泌作用を促進させて、痰の流れを促したり、ネバネバして、喉の奥にこびりつくようにしつこくなる、痰の粘性を低下させることによって、痰を出しやすく、喉の通りをよくする作用をもたらす医薬品です。
気道は、呼吸をした際の酸素の通り道となる、人間の体の一部として重要な機能ですが、その働きとして、粘液を分泌したり、気道の内側を湿潤化して、呼吸をしやすく、喉の渇きから守ったり、侵入してきた雑菌やウィルス、異物などを分泌物と一緒に痰と吐き出す防御作用なども担っています。
気道の分泌を促進する薬としては、アンモニウム塩、ヨード塩、ブロムヘキシン、 アンブロキソールなどがあります。
また、分泌物の粘度を低下させる薬としては、エチルシステイン、カルボシステインなどのシステイン製剤や、リゾチームなどの酵素製剤といったものがあります。
一般的な医薬品としては、去痰薬オンリーの単体ではなく、総合感冒薬や、咳止めシロップ、喘息や激しい咳のための薬として、その成分の一部に用いられることが多いのが特徴です。
例えば、咳止めには、去痰薬としてプロムヘキシン塩酸塩、鎮咳薬として、ジヒドロコデインリン酸塩やノスカピン、ジメモルファンリン酸塩、気管支拡張薬としてdl-メチルエフェドリン塩酸塩などが含まれます。
また、酵素剤としてリゾチーム塩酸塩を配合する場合もあります。
さらに、咳や痰に強力に作用する抗ヒスタミン薬を配合するほか、漢方などの生薬成分として、キキョウやカンゾウを配合することにより、痰や咳を抑える作用はもとより、咳や痰で荒れた喉を癒したり、その甘みで薬を飲みやすくしたりしています。
大人になると、風邪薬や咳止めは、顆粒やカプセルが主流ですが、子供の頃、甘くて美味しい咳止めシロップを飲んだ経験がある方がいらっしゃると思います。
苦くて不味い薬が多い中、甘くて飲みやすく、さらに、飲んで、しばらくすると、あれほど苦しかった咳がピタリとおさまり、痰が切れやすくなったり、痰が出なくなったりと、子ども心にも嬉しい魔法のようなお薬と思えました。
この中に、去痰薬が配合されていたわけです。
咳や痰が続くと、夜中も眠れず、睡眠不足となって体力が低下するだけでなく、1晩に50回咳をすると、10分以上ものランニングをしたのと同じエネルギーが消耗されると言います。
こうした体力消耗を防止するためにも、適正に咳止めや、痰切り薬を服用し、喉の炎症を抑え、体力の維持に努めたいものです。