④オピオイドの使用による依存性
医療用麻薬を使用する際には麻薬による中毒が懸念されます。
しかし一般的に、疼痛患者においては麻薬中毒になるようなことはないといわれています。
麻薬中毒とは、身体的、精神的な薬の依存によって日常生活に支障をきたすという状態です。
慢性疼痛下ではない状態ではμ神経系とκ神経系のバランスが取れています。
そこにオピオイドを投与すると、μ神経系が亢進し、その結果μ神経系とκ神経系のバランスが崩れて依存が生じます。

⑤レスキューとオピオイドローテーション
レスキュー:オピオイド(opioid) を服用中には普段コントロールできてい
る痛みが突然出てくる痛みのこと。
また、突出痛を抑えるために使う速効性のオピオイドのことをレスキューといいます。
オピオイドとは、中等度から重度の疼みに対する治療に用いられる薬物で、
モルヒネやコデイン等のアヘン剤に類似してはいるが、実際アヘンは含んでおらず、
アヘンから合成されることもありません。 通常レスキューは、経口投与の場合、
使用しているオピオイドの1日量の1/6の用量を使用します。注射薬の場合はレスキューは1日量の1/24を追加投与に使用します。
1日の許容量は実用の麻薬用量計算を参考にしてください。
経口投与については使用回数は制限をせずに痛い時に使用し、1時間の間隔をあけての使用となります。
使用回数が多くなるようであれば、オピオイドの1日量を増やす必要があります。
現在レスキューとして使用できる製剤には塩酸モルヒネ製剤と即効性オキシコドン製剤の2種類があります。
使用中のオピオイドを他のオピオイドに交換することをオピオイドローテーションと言います。
日本で使用できるオピオイドは現在3種類あります。そして、オピオイドローテーションは下記のようなときに検討します。

・副作用がある
・増量の効果が不十分なとき
・投与の経路を変更する
・耐性の形成を回避したい
(※注意)ローテーションによって副作用が増強したり疼痛が悪化することもあります。
このことを理解してローテーションを行うべきです。
また、副作用が生じたためのオピオイドローテーションをおこなう際には、
副作用に関する予防をきちんと行い、それでも管理できない場合に使用するべきです。
予防について、詳しくは麻薬投与時の副作用対策を参照してください
オピオイドローテーションを大量投与時に行う件に関しては、
すべてを1度に変換するのではなく少しずつ徐々にオピオイドの変換をおこなうこと。

⑥生食と5%糖液の違い
体内での水分分布を考えると、血漿と細胞間液(細胞外液)と細胞内液に分けられます。
5%ブドウ糖液と生理食塩液の違いを考えていきたいと思います。
体内分布を考える上で成分がブドウ糖とNaClの成分が違うということは、大変重要です。
生理食塩水の体内分布浸透圧についてみてみると、生理食塩液の浸透圧は等張である為、
体内に点滴された生理食塩水は細胞外液にのみに分布され、細胞内には浸透しません。
5%ブドウ糖液の体内分布浸透圧がほぼ等張5%ブドウ糖液ですが、成分は生理食塩水と違ってブドウ糖で出来ています。
この5%ブドウ糖液は、点滴されると体内でインスリンによって即座に分解されます。
これより分解された5%ブドウ糖液は浸透圧物質ではなくなります。
体の中では体の成分、体調を維持するため、水分を均等に分布します。
細胞外液と細胞内液の体の中での量的割合は1:2であるのでこの用量で分布されます。
以上で記述したように、生理食塩水は細胞外液にのみに分布、5%ブドウ糖液は細胞外液に1/3、細胞内液に2/3分布されます。
以上でわかるように、分布されかたが違うのです。