ACE阻害剤は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤とも呼ばれる、血圧を低下させる効果のある薬で、高血圧症の治療に用いる医薬品です。
開発販売されている医薬品としては、長時間の効き目を有する高血圧治療薬のペリンドプリル、高血圧ならびにうっ血性心不全の治療薬として用いられるカプトプリルやエナラプリル、Ⅰ型糖尿病に伴う糖尿病性腎症の治療剤効果を持つACE阻害剤としては、現時点では唯一の治療薬であるイミダプリルなどが、ACE阻害剤に分類されます。
高血圧の状態が継続すると、血流が多くなって、心臓の負担が大きくなり、その負担に対応するために、心肥大などが生じます。
また、動脈をはじめとする血管は、大きくなった血液の圧力に耐えるために、壁が厚くなり、これに不摂生な食事や運動不足などが伴い、コレステロール値もあがってくると、動脈硬化に繋がり、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血といった、命にもかかわる急性疾患に繋がる虞が生じます。
高血圧の予防や治療には、塩分の少ない食事や脂肪分の少ない食事、ナトリウムを排出する効果のあるカリウムをたくさん含んだ野菜などをたっぷりと摂取するなどの食生活の改善や、適度な運動により、肥満を防止したり、体重を適正にコントロールすることが必要になります。
しかし、既に高血圧症と診断されており、その症状が重い場合などには、食生活の改善とともに、血圧を硬化させる薬を適切に飲んで、血圧をコントロールしながら、徐々に、体を改善していくことも考えなければなりません。
ACE阻害剤またはアンジオテンシン変換酵素阻害剤と呼ばれる、この薬のメカニズムはどうなっているのでしょうか?
体内には、レニンーアンジオテンシン(RA)系というホルモンがあります。
これは、ナトリウムを体内に貯留させて、血液循環量を増やし、血管平滑筋を収縮させることによって、血圧を上昇させる役割を果たしています。
人間の体における代表的な昇圧系ホルモンとして、血圧を上げたり、血圧を維持したりする一方で、動脈硬化の発症や進行にも影響をもたらしています。
RA系は、循環系RAと組織RA系とに分けられます。
循環系RA系は、血圧の調整や電解質バランスの急性の機能的変化に影響しています。
これに対し、組織RA系は、慢性の心肥大や血管肥厚、動脈硬化といった構造的変化)に影響しているとされています。
RA系では、レニンの作用により、アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンIが生成します。
さらに、アンジオテンシン変換酵素(いわゆるACE)により、アンジオテンシンIIに転換されます。
このアンジオテンシンIIには、血管を収縮させ、副腎から分泌されるアルドステロンを介して血圧を上昇させる作用があります。
そのため、高血圧症患者にとっては、このアンジオテンシンIIへの転換が過度に行われないよう、転換作用を抑制することによって、血圧の上昇を防止することが可能となると考えられました。
そこで開発されたのが、ACE阻害剤です。
ACE阻害剤は、この一連の転換作用において、アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIの転換に関わるアンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することにより、血圧の効果作用をもたらすことができます。